COP9通信(2003年12月10日)


動き出した会議

 会議も第2週目に入り、昨日(9日)のあたりからようやく各コンタクトグループ
での合意が成立し始めてます。

 心配されていた2004年-2005年の予算問題についても12月8日の深夜に合意が成
立しました。

 COP9の最大のテーマであった「クリーン開発メカニズムにおける吸収源プロジェ
クトのルール」については、12月9日午後7時に合意に達しました。モロッコのマラ
ケシュのCOP7から2年間かかった交渉がようやく合意に達したことは歓迎したいと
思います。これで京都議定書の実施に向けた手続き的な障害はほぼなくなったと言っ
てよいと思います。

 今日(現地時間12月10日)の午後からは閣僚級のラウンドテーブルが始まってい
ます。


予算問題で合意

 気候変動枠組条約の条約事務局の予算問題が大きな問題になっています。この
COP9で2004年から2005年の2年間の予算が審議されていますが、事務局の予算案
にアメリカと日本などがクレームをつけています。

 アメリカはブッシュ政権になって京都議定書から離脱宣言をしたこともあり、予算
を条約関係と京都議定書関係予算に分けるよう執拗に求めています。アメリカが参加
しない議定書関係の予算にはアメリカは拠出しないというのです。

 そのためこの問題を議論しているコンタクトグループ(Contact group on
programme budget for the biennium 2004-2005)の議長提案は、アメリカの主
張に配慮し、京都議定書関連の予算が2004年の本予算(core budget)から外さ
れ、暫定的な割り当てになってしまっていました。

 また、日本政府は議長の提案が前年度比約9%の増加になっていることに、「条約
事務局の予算の使い方が無駄が多く節約できるはずだ」と主張して、前年度並みの予
算を主張しました。

 もし、議定書関連の予算が不安定になると京都議定書の発効に向けた活動が進まな
くなり、大きな打撃になりかねません。そのためこの問題で、アメリカと日本が12
月6日の「今日の化石賞」を受賞しました。

 12月8日午後11時30分に、ようやく合意が成立しましたが、全体の予算額は6%
増の3480万ドルに止まっています。また、アメリカが主張した条約と京都議定書の
予算を切り離す提案はそのままとおり、その結果、議定書関連の予算も減ってしまい
545万ドルが議定書の発効を条件に暫定予算(Interim Allocation)になっており、
これでは足りないため、足りない分はボランタリーな拠出を募ることになっていま
す。

 12月8日の「eco」は、「締約国は、速やかにボランタリーな拠出に合意すべきで
ある。遅れることは、京都議定書プロセスの進展を台無しにすることになりかねな
い。」と警告しています。


環境NGOの活動

 CASAは世界の気候変動問題に取り組む環境NGOのネットワークである気候行動
ネットワーク(CAN)の一員としてロビー活動をしています。CANは毎日、午後2時
から1時間のミーティングを持って、各国の動きなどについて意見交換したり、ロ
ビーのポイントを協議したりしています。

 CANのもっとも重要な仕事は「eco」の発行です。「eco」は、1972年のストックホルム
で開催された国連人間環境会議以来、主要な環境問題の国際会議で環境NGO
が発行しているニュースレターで、COPではほとんど毎日発行されます。

 また、この毎日のCANのミーティングで、「今日の化石賞」についてノミネートを
募り、投票で受賞が決まります。会議によって違いますが、今回のCOP9での毎日の
会議には70〜80名の世界各国の環境NGOのメンバーが参加しています。

 また、各国の政府代表団に個別に話をしたり、ミーティングを持って意見交換した
りするのも、重要なロビー活動の1つです。12月10日午前11時45分からは、CANの
主要なメンバーが小池環境大臣に面会し意見交換を行いました(写真)。



日本のNGOの活動

 日本のNGOもCANの連携した活動をするほか、日本政府の代表団のメンバーに
NGOの考え方を伝えたり、意見交換(ブリーフィング)の機会をもったり、世界の環
境NGOのメンバーを日本政府代表団に会わせたりする活動をしています。

 これまで、12月5日にはクリーン開発メカニズムの吸収源プロジェクトの問題につ
いて、日本政府の交渉担当者とCANのマンバーと意見交換の機会をもちました。

 また、12月6日には日本から参加している環境NGOと日本政府の代表団との意見交
換の機会を持ちました。


日本政府のレセプション

 12月9日の午後6時から、COP9会場近くのホテルで、日本政府のレセプションが
開催されました。

 まず、小池環境大臣の「日本の温暖化政策と技術」と題するスピーチでは、「私は
体重を6%減らすダイエットに日夜取り組んでいるが、大臣の大変な仕事のせいで逆
に5.2%太ってしまった」と日本の温室効果ガス排出量の増加を自分の体重に例えた
ジョークで参加者の笑いを誘っていました。

 しかし、日本の技術の紹介に多くの時間を割き、トヨタ自動車のプリウスやナショ
ナルの家電製品、デンソーの技術などの紹介ビデオをそれぞれ2分近くも流すなど、
緊張感のない内容に終始しました。

 京都議定書に合意したCOP3の議長国の環境大臣として、地球温暖化の深刻な影響
についての認識・危機感や議定書の早期発効に向けた決意を示してもらえなかったの
は、極めて残念です。



シンボルマーク

 地球温暖化の国際的なシンボルマーク(The International Climate Symbol)が、
世界自然保護基金、グリーンピース、オランダの環境省、国連環境計画などのサポー
トで決まりました。このシンボルマークは、地球が暖かくなってロウソクが融けてき
ている図柄で、地球温暖化問題を広めるために自由に使ってよいことになっていま
す。12月9日の午後6時からCOP9会場でこのシンボルマークのキャンペーンの一環
としてファッションショーが開催されました。


               ← シンボルマーク


 

↑ ファッションショーの様子


 
今日の化石賞

12月4日(4日目)

 1位:アメリカ。アメリカは、この10年間に14%も温室効果ガスの排出量を増大
させ、このままでは今後10年間にさらにその排出量が増大するにもかかわらず、
「アメリカは温室効果ガスの強度を18%も削減する目標を持っている。これは何も
対策をしない場合(Business as Usual)との比較では30%もの削減だ」と政府代表
団の代表が発言したこと。

 2位:イタリア。1990年-2000年に間に7.3%も温室効果ガスの排出を増加させた
こと。

 3位:サウジアラビア。IPCCの第3次評価報告書のコンタクトグループで、強行に
合意を妨害していること。


12月5日(5日目)

 1位:ノルウェーとニュージーランドの共同受賞。遺伝子組み替え生物と侵入外来
種をクリーン開発メカニズムの吸収源プロジェクトから排除することに反対の立場を
とっていること。

 2位:コロンビア。クリーン開発メカニズムの吸収源プロジェクトの計測漏れ
(leakage)の問題で、例えば植林事業を行なうことによりその事業範囲の外で吸収
が生じた場合には吸収量として認めるべきとの主張(positive leakage)をしている
こと。


12月6日(6日目)

 1位:サウジアラビア。条約の4条8,9項に関するコンタクトグループ(Contact
    group on the progress of implementation of activities under decision 5/CP.7
    (Article4.8/4.9))で、「炭素固定技術の進展が、CO2問題を過去のものにする
    だろう」と述べたこと。

 2位:アメリカと日本。アメリカは条約事務局の予算案について京都議定書関連の
    予算と条約の予算とを分けるべきだと主張していること。日本は予算が従来
    より300万ドル増加していることに反対していること。

 3位:アメリカ。アメリカが、途上国に適応のための資金援助をしているとPRした
    こと。


日本は1週目の2位

 第1週の化石賞の総合1位はアメリカ、2位は日本です。この総合評価は、1位が3
点、2位は2点、3位は1点で評価されています。

1位  アメリカ                      11点
2位  日本                        5点
3位  サウジアラビア                  4点
4位  ロシア、アルゼンチン、オーストラリア、    3点
    カナダ、フランス、アイルランド、
    ニュージーランド、ノルウェー    
12位 コロンビア、イタリア                 2点


ミラノ短信

 ミラノの街はクリスマスのイルミネーションで飾りたてられています。壮大なゴ
シック様式のドゥオーモ(大聖堂)の前の広場にも大きなクリスマスツリーが飾られ
ています。会議も2週目に入って深夜まで会議が続き、帰りには地下鉄が無くなり、
12月8日は深夜1時30分頃まで走っている路面電車で帰りました。ミラノも2、3日
前から急に寒くなり、深夜は足下からしんしんと冷えてきます。熱燗で鍋料理を食べ
たい!(H)


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