COP9通信3(2003年12月6日)


遅々として進まない交渉

 COP9が始まって1週間が過ぎました。12月6日の土曜日も会議は通常どおり開催されています。様々なテーマについてコンタクトグループが作られ、議論が続いています。しかし、各グループとも議論が難航しています。 

主なテーマは以下のとおりです。

@       クリーン開発メカニズムの吸収源プロジェクト(sink CDM)

A       特別気候変動基金(Special Climate Change Fund)

B       2004-2005年の2年間の予算(the programme budget for the biennium 2004-2005)

C       IPCCの第3次評価報告書(the Third Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change)

D       付属書T国の国家通報(national communication)

 

CDMと吸収源プロジェクト(sink CDM)

このCOP9で決めることになっている、クリーン開発メカニズムにおける吸収源プロジェクト(sink CDM)についての詳細ルールづくりの議論は、遅々として進んでいません。この「sink CDM 」では、コンタクトグループではなく、20カ国からなる「議長の友(friend of the Chair)」による議論が続いていましたが、途上国グループ(G77+China)が内部での意見調整をしたいとのことで、この「議長の友」の協議もストップしてしまっています。今日(12月6日)の午後9時からコンタクトグループの会合が招集されてり、ここで「議長の友」での協議を踏まえた議長の決定案の提案が出され、これを日曜日に各国・各グループが協議して12月8日(月)に協議することになっています。12月10日には「科学的、技術的助言に関する補助機関(SBSTA)」の全体会合でこのコンタクトグループの結論を報告して、COPの決定案を採択することになっており、コンタクトグループの協議時間は月曜日一日しかありません。決定案がまとまるかどうか、予断を許さない状況になっています。

 注:「議長の友(friend of the Chair)」というのは、議長が特定の問題について利害関係があったり異なる意見をもっている締約国の代表を選んで協議を行なうために設置するインフォーマルな協議機関。



基金問題

 京都議定書3条14項は、条約の附属書T国の温室効果ガス排出量の削減が途上国に社会的、環境的及び経済的な影響を与えないようにすることを求め、議定書の第1回締約国会合(COP/MOP1)で、基金の設立、保険、技術移転など、対策による影響を最小化する方策を検討しなければならないとしています。

COP6再開会合で採択された「ボン合意」では、途上国に対する資金供与問題については、条約のもとに特別気候変動基金(SCCF)と後発開発途上国基金の2つの基金が、議定書のもとに適応基金の3つの基金が設立されることになりました。

 

@  特別気候変動基金(SCCF:Special Climate Change Fund)

気候変動特別基金は、気候変動による影響への適応、技術移転、エネルギー・交通・工業・農業・林業および廃棄物管理、産油国の経済の多様化などの目的で使用される基金。

A 後発開発途上国基金(LDCF:Least Developed Countries Fund)

後発開発途上国基金は、国家適応活動計画(National Adaptation Programmes of Action / NAPA)を含む作業計画を特に支援するための基金。

 B 適応基金(Adaptation Fund)

適応基金は、途上国における気候変動に適応するための具体的な活動を支援する基金。

 

条約のもとに設置される2つの基金の資金拠出方法は、@地球環境ファシリティ(GEF)の増資の割増分、A気候変動特別基金、B二国間あるいは多国間で行なわれる資金供与の3つのルートとされ、適応基金はクリーン開発メカニズム(CDM)事業の収益の一部(認証排出量:CERsの2%)がその資金源になることとされています。

こうした基金の設置が決まったことは評価できますが、@支援する資金の額は明示されていないこと、A資金の拠出は義務ではなく自発的なものであることの2点で発展途上国が大幅に譲歩したものになっています。

2003年6月の補助機関会合(SBI18)では、SCCFにより支援を受ける活動について、ホスト国が主導するもので、費用効率性があり、各国のSD(持続可能な開発)および貧困削減戦略に統合されるべきとしています。優先順位については、気候変動の悪影響を受ける適応活動を最優先とし、技術移転とそれに伴うキャパシティ・ビルデング活動の2分野を優先することになりました。また、SCCF活動が、LDC基金やGEFの気候変動重点分野を補うものであるべきだということも強調しています。

また資金の目処についても、これまで、EU諸国やカナダ、アイスランド、ノルウェー、ニュージーランド、スイスが、2005年までに4億1000万USドルの資金拠出を宣言していますが、日本などその他の付属書T国は、まだ拠出額を明らかにしていません。

 

COP9での議論

SCCFについての地球環境ファシリティ(GEF)に対するガイダンスのなかで、資金供与を受ける活動やプログラム、措置を定義づけし、優先度をつける議論が続いています。

6月に開催された補助機関会合(SBI18)で、適応措置と技術移転を優先することで合意されていましたが、他の分野(各分野での温暖化対策や経済の多様化)についても再考すべきだと意見もでています。

サウジアラビアは相変わらず、温暖化対策により石油などが売れなくなることへの対応もこの基金で検討すべきだと主張しています。

 12月3日の「eco」は、「適応活動に優先順位を与え、また、価値のある削減活動や脆弱な地域での小規模プロジェクトにも優先順位が与えられるべきである」と主張しています。また、「途上国のSCCFへのアクセスは簡単な適格基準と素早い手続き」とされるべきであり、「代表団は些細なことで議論している間に、最も脆弱な人々が、すでに気候変動により影響を受けている。SCCFの基準と優先準備書面にはCOP9で合意されなければならない。早急に、付属書T国は意味のある新たな、追加的な適応のための資金を約束するべきである」と主張しています。

 注:「eco」は環境関係の国際交渉で環境NGOが、ロビー活動のために発行しているニュースです。気候変動枠組問題の会議では、世界の気候変動問題に取り組む「気候行動ネットワーク(CAN)」が責任編集しており、政府代表団も含めてもっともよく読まれています。

 


増えつづける温室効果ガス

 今回のCOP9には、付属書T国が提出した第3回国別報告書に基づき、1990年から2001年までの先進国の温室効果ガス排出量と今後の予測について、条約事務局がまとめた文書が出されています。

 この報告書によれば、2000年における先進国全体の温室効果ガス排出量は、1990年に比べ0.7%減っています。これはロシアやウクライナなど経済移行国の温室効果ガス排出量が1990年比で33.6%減っているからです。経済移行国以外の先進国の温室効果ガス排出量は8.3%の増加となっています。ドイツやイギリスなどが、1990年比で19%、13%も減少させているのに対し、日本やアメリカは9%と13%の増加になってしまっています。また、2010年の排出予測をみると、先進国全体で約10%、経済移行国を除く先進国全体で17%増加するとなっています。  

 

 この問題を討議した12月3日の全体会合では途上国から、全体の排出量が減ったのは、経済移行国の排出量が大幅に減っているからで、その他の先進国の排出量は増加していること、2010年の予測では排出量10%も増加する予想になっており、京都議定書の削減目標を達成することは難しいとの指摘がなされていました。

 


自転車マーチ

12月6日(土)の午後3時からイタリアの約46団体が主催する自転車マーチ「止めよう地球温暖化と戦争(Cycling Marchー STOP CLOBAL WAR-Mー Stop climate change)」が行なわれました。

 数百台の自転車と数千人の様々な旗をもった人々が、会場近くの公園から市内の繁華街に向けて、3時間あまりの自転車と徒歩でのマーチを行いました。イラク戦争は石油のための戦争とも言われており、地球温暖化問題と決して無関係ではありません。

    

 

 

 会議場の前で、気候変動の悪影響について訴えるイタリアのNGO。寒い天候にもかかわらず水着姿で、ブッシュ大統領やプーチン大統領が地球(ビーチボール)を投げるパフォーマンス。(「ENB」より)  お隣のフランス南部では、洪水により大きな被害が出ている模様。原発も停止する事態に。

      


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