COPMOP3 通信6
(2007年12月14日)
◆バリマンデートの合意を阻み、京都議定書を全面否定するアメリカ提案
12月13日午後11時、条約の下の対話(ダイアログの継続)の第3次決定草案を議論している
非公式の会合で、アメリカがバリマンデートの合意を阻み、京都議定書を全面否定する提案
をしました(その全文は後記)。アメリカの提案は、第3次決定草案の1.(b)の(@)の先進
国条項(all developed country)に関するもので、以下のような特徴をもっています。
・先進国に限定せず、途上国を含めた提案になっていること
・各国が、効果的、計測可能で報告可能であれば、それぞれ勝手にどのような対策を選んでも
よいこと
・この対策は各国が勝手に、これをやると宣言するだけで、それを評価する必要のないこと
この提案は、京都議定書の基本的な構造である、法的拘束力、国別総量削減などを根本から
覆す提案です。また、先進国と途上国とに差異を設けていないことは、条約や議定書の原則で
ある「共通だが差異ある責任」の原則に反するものです。
提案では、(i)にオプションの一つとして「共通だが差異ある責任とそれぞれの能力に対応
して」とされていますが、ひとつのオプションに過ぎません。
また、(b)に「法的拘束力、市場やセクター別のプログラムなどを含む、適切な国内計画と
対策」が提案されていますが、選択肢の一つに過ぎず、この「法的拘束力」を含む「国内計
画と対策」を選らばなければ、法的拘束力ある義務を負う必要はありません。
アメリカが、この最終日の前日午後11時というタイミング、しかも第3次決定草案の多くの
部分で合意が成立しつつある段階で提案してきたことは、2週間近い各国代表団の真摯な努力
を無にするものです。また、これまでの協議ではほとんど発言せずに、この最終段階でこう
した提案をしたことは、バリマンデートの合意を妨害する意図としか考えられません。
◆日本とカナダがアメリカ提案を支持
このアメリカの提案を日本とカナダが支持しています。非公式会合で、日本政府の代表は、
「アメリカ提案について話し合うべき」と発言したとされます。政府関係者は、日本が全面的
に支持しているわけではないとしながらも、アメリカ提案について「話し合うべき」とする発
言をしたことは否定しませんでした。ほとんどの国が支持しないなかで、「提案を話し合うべ
き」との発言は、提案を支持するものにほかなりません。このままバリマンデートの合意がで
きずに、バリ会議が失敗に終われば、日本はアメリカ、カナダとともに、バリ会議を失敗に導
いた張本人の一人として歴史に不名誉な名を刻むことになります。12月14日午前3時15分まで
続いた非公式会合は、いったん散会し、12月14日午前中に再開される予定になっています。
◆アメリカ提案の内容
(b)
持続可能な発展の観点から見た緩和策の拡大また、またそのような行動を認識する手段に
ついて次のような項目を含むものを検討する
Enhanced action
on mitigation of climate change, and the means to recognise such
action, in the context of sustainable development, including, inter alia,
consideration of:
(i) 効果的、計測可能で、そして報告可能な国内緩和活動〔経済発展状況に応じて〕
〔経済発展状況と温室効果ガス排出に応じて〕〔経済発展状況とエネルギー利用に応じて〕
〔共通だが差異ある責任とそれぞれの能力に対応して〕:
effective,
measurable, and reportable domestic mitigation actions, [depending on the
level of economic development and significance] [depending on the level of
economic
development and GHG contributions][depending on the level of economic
development
and energy utilization ][ in accordance with the principle of common but
differentiated
responsibilities and respective capabilities ]:
(a)適切であれば、国内事情と関連する努力のレベルを考慮しながら、数値化された国別抑制
削減目標を含む
including, as appropriate, quantified national emission limitation and reduction
objectives, taking into account national circumstances and relative level of efforts;
(b)適切であれば、法的拘束力のある、市場ベースやセクター別プログラムなどを含む国内計画と
対策を含む
including, as appropriate, domestic plans and measures that may include binding,
market-based and sectoral programs; and
(c)適切であれば、外部からの技術・資金・能力開発のサポートを得ること
supported, as appropriate, by external technology, financing and capacity
building.
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