COPMOP3 通信6 20071214日)              

                      地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA

バリマンデートの合意を阻み、京都議定書を全面否定するアメリカ提案

 1213日午後11時、条約の下の対話(ダイアログの継続)の第3次決定草案を議論している
非公式の会合で、アメリカがバリマンデートの合意を阻み、京都議定書を全面否定する提案
をしました(その全文は後記)。アメリカの提案は、第3次決定草案の1.(b)(@)の先進
国条項(all developed country)に関するもので、以下のような特徴をもっています。


・先進国に限定せず、途上国を含めた提案になっていること
・各国が、効果的、計測可能で報告可能であれば、それぞれ勝手にどのような対策を選んでも
 よいこと
・この対策は各国が勝手に、これをやると宣言するだけで、それを評価する必要のないこと

 この提案は、京都議定書の基本的な構造である、法的拘束力、国別総量削減などを根本から
覆す提案です。また、先進国と途上国とに差異を設けていないことは、条約や議定書の原則で
ある「共通だが差異ある責任」の原則に反するものです。

提案では、(i)にオプションの一つとして「共通だが差異ある責任とそれぞれの能力に対応
して」とされていますが、ひとつのオプションに過ぎません。

また、(b)に「法的拘束力、市場やセクター別のプログラムなどを含む、適切な国内計画と
対策」が提案されていますが、選択肢の一つに過ぎず、この「法的拘束力」を含む「国内計
画と対策」を選らばなければ、法的拘束力ある義務を負う必要はありません。

アメリカが、この最終日の前日午後11時というタイミング、しかも第3次決定草案の多くの
部分で合意が成立しつつある段階で提案してきたことは、2週間近い各国代表団の真摯な努力
を無にするものです。また、これまでの協議ではほとんど発言せずに、この最終段階でこう
した提案をしたことは、バリマンデートの合意を妨害する意図としか考えられません。

日本とカナダがアメリカ提案を支持

 このアメリカの提案を日本とカナダが支持しています。非公式会合で、日本政府の代表は、
「アメリカ提案について話し合うべき」と発言したとされます。政府関係者は、日本が全面的
に支持しているわけではないとしながらも、アメリカ提案について「話し合うべき」とする発
言をしたことは否定しませんでした。ほとんどの国が支持しないなかで、「提案を話し合うべ
き」との発言は、提案を支持するものにほかなりません。このままバリマンデートの合意がで
きずに、バリ会議が失敗に終われば、日本はアメリカ、カナダとともに、バリ会議を失敗に導
いた張本人の一人として歴史に不名誉な名を刻むことになります。1214日午前315分まで
続いた非公式会合は、いったん散会し、1214日午前中に再開される予定になっています。

アメリカ提案の内容

(b) 持続可能な発展の観点から見た緩和策の拡大また、またそのような行動を認識する手段に
ついて次のような項目を含むものを検討する

Enhanced action on mitigation of climate change, and the means to recognise such
action, in the context of sustainable development, including, inter alia,
consideration of:

  (i) 効果的、計測可能で、そして報告可能な国内緩和活動〔経済発展状況に応じて〕
〔経済発展状況と温室効果ガス排出に応じて〕〔経済発展状況とエネルギー利用に応じて〕
〔共通だが差異ある責任とそれぞれの能力に対応して〕:

effective, measurable, and reportable domestic mitigation actions, [depending on the
level of economic development and significance] [depending on the level of economic
development and GHG contributions][depending on the level of economic development
and energy utilization ][ in accordance with the principle of common but differentiated
responsibilities and respective capabilities ]:  

(a)適切であれば、国内事情と関連する努力のレベルを考慮しながら、数値化された国別抑制
削減目標を含む
including, as appropriate, quantified national emission limitation and reduction
objectives, taking into account national circumstances and relative level of efforts;
  

(b)適切であれば、法的拘束力のある、市場ベースやセクター別プログラムなどを含む国内計画と
対策を含む

including, as appropriate, domestic plans and measures that may include binding,
       
market-based and sectoral programs; and
 

 

(c)適切であれば、外部からの技術・資金・能力開発のサポートを得ること
supported, as appropriate, by external technology, financing and capacity building.
 

 

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