COPMOP3 通信5
(2007年12月14日)
◆条約の下の対話(ダイアログの継続)の第3次決定草案
12月12日夜、議長の友(friend
of the chair)といわれる40カ国の大臣や閣僚級が集まって、条
約の下の対話(ダイアログの継続)の交渉がもたれ、また事務レベルの非公開の協議をすることに
なり、12月13日朝、そのたたき台となる第3次決定草案が公表されました。
この第3次決定草案は基本的に第2次案を踏襲していますが、以下の点で第2次草案と変わっています。
2次草案に比べて後退したところはほとんどなく、総じて前向きになったと評価してよいと思います。
1.の検討すべき項目の頭書きのところの、「条約のもとに、2013年までとそれ以降(up
to and
beyond2012)の総合的で効果的な世界全体での行動についてのプロセスを立ち上げる」との部分に、
第2次案ではなかった「2013年までとそれ以降」と「総合的で効果的な」という文言が入ったこと。
この「2013年までとそれ以降」とされたことで、長期的なことだけではなく、当面の次期枠組みにつ
いての議論が行われることが明確になりました。
1.(a)の「共有すべき視点」のところに、「排出削減のための長期的な世界全体の目標を含む」との
記載が入ったこと。
1.(b)の(A)の途上国条項に、最初の案では(A)の冒頭に書かれており、第2次草案では削除されてい
た「認識する方法(means to recognize)」が、今度は最後に部分に付け加えて書かれたこと。「認識
する方法(means to recognize)」はなくてもよいとは思いますが、冒頭にあるのと、最後にあるのと
ではまったく意味が違ってきます。
第2次草案では、1.(b)の(C)が「国際競争を行なっているセクターの共同行動(Cooperative
action
in internationally competitive sectors)」が、当初の草案の「特定のセクター(specific
sectors)」に戻ったこと。この部分は当初の草案では、今回の3次案と同じでした。2次草案の「国際
競争を行っているセクター」との表現では鉄鋼業などの産業部門のみを意味し、国際航空・船舶から
の排出(バンカーオイル)が検討課題にならないことを環境NGOは心配していたことから、当初の「特
定のセクター(specific sectors)」に戻ったことは歓迎すべきことです。
1.(e)のオプション2では、2次草案では「特別作業グループ(ad
hoc working group)」をここバリ
で立ち上げるとされていたのが、「特別作業グループ(ad
hoc working group)」と「交渉委員会
(negotiation committee)」の両案が併記されています。この「交渉委員会(negotiation
committee)」
はアメリカが提案したとされていますが、「特別作業グループ」と「交渉委員会」とがどのように違う
かははっきりしません。
この3次草案は2次草案に比べてほとんど後退したところはなく、環境NGOとしては、すべての先進国に
ついての数値目標(数値化された抑制・削減排出目標)のところを「法的拘束力のある数値目標」とす
べきとか、「2050年ターゲットを1990年レベルからにすべき」とか、途上国条項の「計測可能で報告可能
な緩和のための行動」より、「計測可能で検証可能(verifiable)」としたほうがよいなどの意見はあり
ますが、以下の点で、このままでも十分に「バリマンデート」に値する内容になっていると思います。
・ これからの交渉について、世界全体では、IPCC第4次報告書の「これから10−15年の間に排出をピーク
として削減に向かい、21世紀の半ばまでに2000年レベルから半減以上に削減する必要がある」との警
告に応え(Responding)、先進国については「大気中の濃度をもっとも低いレベルに安定させるため
には先進国は2020年までに1990年レベルから25〜40%削減する必要がある」と指摘を認識
(Recognizing)する、と今後の交渉の方向性を明確にしていること。
・ 事実上、アメリカに対する京都議定書と同じ「数値化された抑制・削減排出目標」の交渉をすること
を意味する条項が入っていること。
・ 途上国の参加の窓が開かれていること。
・ 交渉期限が2009年までとされていること。
◆難航する交渉
この条約の下の対話(ダイアログの継続)の第3次決定草案は、12月12日の夜の閣僚級の「議長の友達
(friend of the chair)会合」で、事務レベルの折衝に差し戻され、12月13日の朝から断続的に非公式
交渉が続いています。この原稿を書いている12月14日午前1時の段階では、まだ事務レベルの非公式交渉
が続いており、まだまだ決着がつきそうにありません。
京都議定書9条の見直しも、先進国の次期削減目標を検討するAWGもすべて交渉が止まっており、条約の下
の対話の交渉の進展待ちになっています。
イヴォ条約事務局長が、会議がまる1日延長になると言ったとの噂もあり、しばらく状況は動きそうにあり
ません。
◆アル・ゴア元副大統領「政権は再生可能資源」
13日の夜はノーベル平和賞をとったアル・ゴアが会議場で演説を行いました。彼は、気候変動は将来世代
ではなく、私たちの世代が影響を受けると同時に、その原因を起こしていると訴えかけました。また、ア
メリカ市民として、「不都合な真実」を話すとし、このバリではアメリカが問題だと明言しました。しか
し、アメリカだけではなく他の国も削減を拒もうとしているとしました。その上で、選択肢は2つあり、
一つはアメリカが動かないことに怒りとフラストレーションをためながら終わるか、あるいはアメリカが
将来戻る空欄を残しておいて、今前に進むことを決断するかだと発言しました。科学者は残された時間が
少ないとしており、ここでアメリカが動くことを期待して時間を無駄にするのはもったいない、1年と40日
後には新しい米政権が誕生すると言ったときは、会場から大きな拍手が沸きました。彼は、オーストラリア
も2ヶ月前には違うポジションであったが、市民に新たに選ばれた新豪首相はバリに議定書の批准に駆けつ
けたことをあげ、政権は(死んだままではなく)再生可能な資源だとして演説を締めくくり、会場に集まった
数百人にスタンディング・オーベーションで見送られました。
彼の演説を、ぜひ非公開で会合を続けている交渉担当者に聞いて欲しかったと思いました。ブッシュ政権だ
けを見ているのでは、アメリカの早い動き、あるいは各地で起こっている気候変動の対策に向けた動きから
取り残されてしまいます。
◆化石賞
1位 アメリカ、カナダ、日本とロシア
これらの国は、2020年まで25〜40%削減という文言をバリロードマップに盛り込むことを拒んでいる。最悪の
気候の危機を避けるためにはこれくらいの幅が必要であることを科学ははっきりと述べている。ロシアが先
頭に立って文言を削除するように発言し、他の国はこの文言が戻らないように後押しした。まるで、彼らが
タイタニック号に乗りながら進路を変更するのを拒み、氷山にぶつかるまで待つ代わりに、温暖化で氷が融
けるまで待っているのだ。
2位 アメリカ
アメリカは技術移転について話し合う閣僚級の円卓会議において、技術移転の話を全くせずに、原子力とク
リーンコールの話に時間を費やした。COPを通して、アメリカは技術を褒めちぎったが、途上国に移転する資
金については何も話さず、移転のない技術の話ばかりだった。
3位 カナダ
カナダは、非常に重要な閣僚級会合で、会合が終わる前に部屋を出て行った。昨日「議長の友達(鍵となる
交渉担当者だけでもつ)会合」においては、40人の鍵となる閣僚と困難な問題について話し合っている最中
にカナダの環境大臣は席を離れた。どこに行ったのでしょう?彼は後で会議のカクテル・レセプションで飲
んでいるところを発見されている。