COPMOP3 通信4 20071213日)                     

◆ 閣僚級会合始まる

 12月12日から閣僚級会合が始まりました。開会式には130カ国以上の環境担当相や潘基文
(バンギムン)国連事務総長、議長国インドネシアのユドヨノ大統領らが出席していました。
またオーストラリアのラッド新首相が閣僚会合に先立ち、潘基文国連事務総長に京都議定書の
批准書を直接手渡しました。

 ◆ 鴨下大臣、京都議定書より更に前進する必要性について発言

  12日は朝から閣僚級会合が開かれ、各国の環境大臣が声明を発表しました。鴨下大臣は、以下の点
について発言していました。

・京都議定書の削減目標の達成が非常に厳しいものであるが、現在目標達成計画の見直し中であり、
 来年には新たな削減策の導入の予定がある
IPCC4次評価報告書の科学的知見に基づいて議論を進める必要
・ツバルの懸念を共有する
・バリロードマップを取りまとめる必要
@プロセスは2009年に終えること、Aすべての主要な排出国が参加する特別作業部会(AWG)を条約
 の下に立ち上げ、議定書の下のAWGと連携しながらやっていくこと、B緩和、適応、技術、資金の他、
  ボトムアップのセクター別アプローチ、官民のパートナーシップ、国際競争力から見た公平性を確
  保することが大事であること
・途上国の対策では、大気汚染の解決にもなるようなCo-benefit(共通の利益)を考えることが大事
・脆弱な国対しては適応が重要
・議定書より大きく前進させる必要があり、世界全体で2050年に半減させる
G8では温暖化問題が主要な議題

  しかし、今後も法的拘束力をもった総量排出削減目標を掲げること を公言することを求めたNGO
は残念ながら応えてもらえませんでした。

◆ バリマンデート関係の決定草案でそろう

1211日、バリマンデートの関係で、AWG、京都議定書9条の見直し、条約の下の対話(ダイアログ)
の継続について、それぞれの新たな決定草案が公表されました。しかし、いずれの決定草案も合意は
できておらず、対立する意見が併記されており、非公式の閣僚級の協議が続いています。

 

◆ AWGの決定草案(2007年12月11日)

1210日付けの決定草案と大きく変わったところは、この作業を続ける上での「共有すべき視点
shared vision)」についてで、2つのオプションが提案されています。

オプション1は、前の草案でも書かれていた、このAWGの作業は、条約と議定書の原則や規定を基
礎とする条約の究極の目的に則った「共有すべき視点」で行われるべきとされています。

オプション2は、この「共有すべき視点」について、IPCC4次報告書が、これから1015年の間
に排出をピークとして削減に向かい、21世紀の半ばまでに2000年レベルから半減以上に削減する必
要があり、大気中の濃度をIPCCのシナリオのもっとも低いレベルに安定させるためには先進国は20
20
年までに1990年レベルから2540%削減する必要があると指摘していることが強調されるべきだ
としています。さらに、これからの交渉では、温室効果ガスの濃度を450ppm以下に安定化するシナ
リオの分析を含む情報を参考にする必要がある、とされています。

今回の会議は、世界の政策決定者が、IPCC4次報告書などの科学者の警告を受け取め、それを20
13
年以降の制度枠組みと削減目標の交渉にどう生かすかが問われています。

このオプション2EUの提案と思われ、日本やカナダ、オーストラリアはこうした記述をすることに
反対していますが、先進国の次期以降の削減目標が、IPCCなどの科学の警告を前提として進めること
は当然のことで、こうした記述に反対することは、子供たちと将来世代に対する責任の放棄に等しい
と思います。

◆ 京都議定書9条の見直しについての決定草案(2007年12月11日午後6時)

この決定草案では、京都議定書の何を「見直す」のかについて、先進国と途上国が対立しています。
草案では、「実施状況(implementation)」、「効果(effectiveness)」、「実施状況と効果」の3
つがオプションとして提案されています。この「見直し」の議論が途上国の新たな見直しにつながる
ことを警戒する途上国は「京都議定書の実施状況」の見直しを主張し、この「見直し」を途上国の参
加が必要との議論につなげたい先進国は「京都議定書の効果」の見直しを主張する構造になっていま
す。

 また128日付けの前の草案では、検討すべき項目として15項目が提示されており、そのなかに「目
標の性質」や「目標期間や基準年」などの項目があり、日本政府はこうした項目の見直しを支持して
いました。この「目標の性質」の見直しは、経済産業省などが主張している法的拘束力のない目標に
つながる恐れがあります。また、「目標期間や基準年」の見直しは、これも経済産業省などが主張し
ている技術の研究・開発期間を考慮して20年とか30年先にし、また基準年を1990年ではなくより温室
効果ガス排出量の増加した2000年などに変えさせることになりかねません。

 今回の決定草案は、(a)から(f)までの6項目になり、「目標の性質」や「目標期間や基準年」などの
項目はなくなっています。しかし、この6項目は「例示(in particular)」とされ、「目標の性質」や
「目標期間や基準年」などが見直し対象となる可能性は残されています。

 AWGや条約の下での対話との関係についても、強い表現ではありませんが、AWGや条約の下での対話の
内容を、来年のCOPMOP4での見直しの準備に際して考慮するとされています。

 ◆ 条約の下の対話(ダイアログの継続)の決定草案

1211日付けの条約の下の対話(ダイアログ)の決定草案は、前の座長の非公式文書(Nonpaper
では、一文となっていた、最新の科学的知見に基づいて「気候変動の深刻な影響を避けるためには、こ
れから1015年の間に排出をピークとして削減に向かい、21世紀の半ばまでに2000年レベルから半減以
上に削減する必要があり、先進国は2020年までに1990年レベルから2540%削減する必要がある」との
記述部分を、条約の下の対話と直接関係する世界全体のピークと2050年半減目標の記述と、先進国の20
20
年目標とをわけ、前者はこうしたIPCC4次報告書の指摘に「応えて(Responding)」とされ、後者
IPCCについての記述はなく、必要な削減を「認識し(Recognizing)」とされています。

また、前の非公式文書では、先進国について検討すべき課題のひとつとされていた「すべての先進国 
の数値化された排出目標」が、「すべての先進国の数値化された抑制および削減排出目標」と京都議
定書と同じ表現になりました。この条項は事実上、アメリカ条項で、アメリカも京都議定書の批准国と
同じ排出削減目標を検討することになります。また、途上国の参加の条項も、
認める方法(mean to
recognize
)」を検討するとされていたのが、認める方法(mean to recognize)」は削除されました。  

こうした前の決定草案に比べてよくなった部分もありますが、一方で「2012年以降の長期的な協調行
動」を検討するとされていたのが、「2012年以降」の文言が消え、次期枠組みについての検討との趣旨が
弱められたり、途上国についての記載も「計測可能で検証可能な緩和のための行動」とされていたのが、
「計測可能で報告可能な緩和のための行動」と弱められています。

 ◆ 混迷を深める交渉

 1212日から閣僚級の会議が始まっていますが、まだバリマンデートの概要は見えてきません。AWG
交渉期限を2009年末までに終わることはほぼ合意ができていますが、条約の下の対話(ダイアログの継続)
の交渉期限については中国などが2010年を主張していると言われます。

 また、条約の下の対話で何を議論するか、議定書9条で何を「見直す」かについては、意見が対立した
ままです。これに、技術移転の基金の問題や、途上国の森林減少をくいとめることによる排出量の削減問
題などがからんで、バリマンデートの交渉はますます混迷を深めているように思います。1212日夜も、
主だった国の閣僚級が集まって、交渉が続けられていますが、条約の下の対話の決定草案のIPCC4次報告
書の削減数値の部分はオプションが6つくらいに増えているといわれます。

 会議もあと3日を残すのみ。交渉の時間はあまり残されていません。

 ◆ IPCCとアル・ゴア氏がノーベル平和賞を受賞

1210日、ノルウェーのオスロで、IPCCとアル・ゴア氏にノーベル平和賞が授与されました。受賞の様
子は、会議上でもテレビ報道されました。IPCCのパチャウリ議長は今日1213日の午後6時から、各国の
大臣などにIPCC4次報告書の内容を説明することになっています。またアル・ゴア氏も今日バリに入り、
夕方730分から講演会が開催されることになっています。

気候変動問題にとって、IPCCとアル・ゴア氏がノーベル平和賞を受賞したことは、2月のIPCC1作業部
会の第4次報告書の発表から始まった2007年のハイライトです。現在進められているCOP13COPMOP3がこ
の栄えある年の最後を飾れるかは、ここ数日の会議の進行にかかっています。

 京都で生まれた議定書、10歳の誕生日

 11日は議定書が京都で採択されてから10年目の誕生日でした。夕方には、気候ネットワークを中心に、
日本のNGOで誕生日パーティを開催しました。目的は、温室効果ガスを削減するための最初の国際的枠
組みである議定書を祝い、あと20日で第1約束期間が始まることを喚起し、議定書が更なる役割を果たす
議論をするための交渉をバリで始めることを促すことです。パーティーは会議場隣のホテルのプール
サイドで行なわれ、多くの会議参加者で賑わっていました。

 オープニングは、バースデーソングを歌いながら誕生日ケーキのロウソクを吹き消すところから始
まり、議定書の策定に大きな役割を果たしたマルタ政府代表のクタヤール氏(Michel Zummit Cutajar
が乾杯の音頭をとり、ゲストとして、鴨下環境大臣、デンマーク環境大臣 (
Connie HedegaardNGOの代
表としてジェニファーがスピーチをしました。

 また、気候ネットワークの浅岡さんより、スペシャルゲストとして招かれた国連事務総長のバンキ、
ムン氏に旗が渡されまたバンキムン氏から将来議定書に基づいて持続可能な未来を築いていくユース
メンバーに旗が渡されました。多くの日本のユースは浴衣姿で、会場を華やかに彩っていました。
自然エネルギー市民の会が持ってきたシロクマくんとペンギンさんも大人気で、京都10周年バッジを
配布している間中、メディアに写真を撮られていました。

 パーティーの後半は条約事務局主催でディナーパーティーが開催され、天ぷらや巻き寿司が振舞われ
ていました。

 議定書の核心部分である、「法的拘束力のある総量排出削減」を将来も続けていくための議論が
バリで始められることを望む日本のNGOの思いが多くの政府に伝わることを願っています。

議定書の誕生日の 化石賞

 交渉に参加する世界の環境NGOネットワーク=CAN(キャン)が選ぶ化石賞は、議定書の誕生日も
日本が受賞しました。CASACANに参加するメンバーですが、せっかくの誕生日に日本が不名誉な化
石賞を受賞したのは、とても残念です。この会議で受賞した数は、日本が3番目に多いという結果に
なっています。

1位 アメリカ

 気候変動枠組み条約は持続可能な条約ではないと発言しながら、バリロードマップにある持続可
能性に関する文言を削除しようとした。また、記者会見で2020年までに25-40%削減するのは「多く
の国にとって全く非現実的である」と発言した。さらに、ノーベル平和賞を受賞したIPCCの科学に
ついて「多くの不確実性がある」とし、IPCCの分析は「分析の一部に過ぎない」とした

2位 カナダと日本

 カナダと日本は、京都議定書の10周年に、IPCCから引用された25-40%削減の文言を入れることに
反対。日本は会議の間中、日本自身の大幅削減について言及せず。

3位 カナダ、日本、アメリカとオーストラリア

 ダイアログの中で何度も資金と技術移転は優先事項ではないということを暗示する発言をした

 

 

 

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