◆ 適応基金の始動に向けて合意へ     

10日夜、適応基金のコンタクトグループは、補助機関会合に向けた決定草案に合意しました。これまで運営主体をめぐって主に先
進国と途上国で対立し、なかなか議論が進んでいませんでしたが、今回は最後のコンタクトグループで途上国グループが感謝の意
を述べたように、「皆の努力で建設的な議論が行なわれたおかげで、途上国にとって非常に重要な適応基金の合意に至ることがで
きました」。補助機関会合で最終的に採択されれば、バリ会議での一つの重要な成果になります。

決定草案では、運営主体とその機能、運営主体となる理事会のメンバー、意思決定、事務局、クレジットの管理機関、クレジットの
資金化、基金へのアクセス、組織運営とそのレビュー(見直し)などについて合意しています。

まず、運営主体としては適応基金の理事会が設置されることになりました。この理事会は、事務局と受託機関によって運用されます。
また理事会は、COPMOPの権限とガイダンスのもと適応基金を運用することになっています。今後はCOPMOPのガイダンスを経て
理事会が優先事項、ガイドライン、事業の承認、基金の監視、レビューなどについて検討・実施し、さらにその状況をCOPMOPに報
告するという形になりました。理事会のメンバーは、ナイロビで合意された通り、途上国が多数派を占めるように、国連の5つの地域
グループから二人ずつ、小島嶼国から一人、後発開発途上国から一人、先進国(附属書T国)から二人、途上国(非附属書T国)から
二人で構成されることになりました。また、意思決定はコンセンサスに基づきますが、それでも合意できなかった場合には一国一票制
度で3分の2以上の票が必要になります。
また、事務局としては、先進国が拘っていたように、地球環境ファシリティー(GEF)が当面の間は運用することになりました。クレジット
の資金化を行なうクレジット管理機関に関しては世界銀行が当面の間は任されることになっています。これらの組織構成を含めて3
後のCOPMOP62010年)では、締約国、国際機関、その他のステークホルダーの意見を考慮しつつ、適応基金の運用状況が見直さ
れることになりました。途上国やNGOが懸念を示していた世銀やGEF3年後以降も運用を任されるかどうかは、この見直しにかかっ
ています。

マラケシュ合意で設置されることが決まった適応基金が議定書の10周年に、始動に向けて動きだすことができるのは、バリでの大きな
成果になります。既に様々な地域で地球温暖化の深刻な影響が起こっており、一刻も早くこの基金が脆弱な国の具体的な事業に資金
を提供できるように運用されることが期待されています。

一方で、今後の問題は資金です。今年8月にウィーンで開かれたダイアログの会議で、事務局がまとめた資料では、適応にかかるコスト
は、様々な機関が見積もったものをまとめると490-1710億ドルになるとされています。(これには、生態系の適応コストはほとんど考慮さ
れていません。一方、適応技術の改善によるコスト削減も考慮されていないそうです。)
それに対してCDMからのクレジットで2030年までに適応基金に入ることが見込まれている額は、低くて1-5億、高くて10-50億ドルで、桁が
違います。適応基金だけで対応するわけではないのですが、適応コストをどのように負担していくかということは今後の大きな課題です。
資料はhttp://unfccc.int/meetings/dialogue/items/4048.php からダウンロードできます。

inserted by FC2 system