バリで話し合われる適応策について
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1.適応基金
(1)これまでの流れ1997年、京都議定書の下に適応基金を設置
【
目的】特に気候変動に脆弱な国々に対して具体的な適応事業に資金供与すること【
財源】財源はクリーン開発メカニズム(CDM)事業からの収益の一部(2%)及び他のCOP/MOP1では、基金の運用機関をめぐって議論が進まず、COP/MOP2
までに適
応基金の運用に関心のある機関に意見提出を求めました。その後、地球環境ファシ
リティー(GEF)、国連開発計画(UNDP)と国連環境計画(UNEP)が意見提出を行うも
機関については合意できませんでした。ナイロビでは基金の運用方法について先に
議論することになり、運用原則、方針などについて合意しました。合意された点で重
要と考えられるのは以下の点です。
これらの決定に基づいて基金の運営に関心のある機関に更に意見提出を求め、
COP/MOP3にて運用機関を決定することを目指すことになっています。
(2)各国の意見
EU、日本など多くの先進諸国:
・ 運用機関に関しては、条約の基金と同じように地球環境ファシリティー(GEF)2が適途上国:
・
適応基金は先進国からの拠出金に頼らないユニークな基金であり、先進諸国からの
拠出金を扱い、それらの国の意向が強く反映されるGEFを運用機関にはしたくない
・
適応基金は議定書の下に設置されているが、GEFにすると議定書に入っていないア
メリカが基金に影響を及ぼすことができることになる
・
基金の管理は透明性を確保し、アクセス手続きを容易にする
3.バリに向けての課題
今回の課題は基金の運営体制、組織を決めることです。 また、その中で以下の
点についても今後決めていく必要があります。
・ 理事会の体制と理事の候補
今回、適応基金の運用機関を決定し、運用を開始させることも必要ですが、それ以
上に理事会や機関の体制についてきちんと決着させることが重要です。脆弱な国に
対して支援する体制を確保できるかどうかということに重点をおいた決定がなされる
ことが期待されています。
[1]
現在、CDMから見込まれている収入は低くて1〜5億ドル、高くて10−50億
ドル。また、適応に必要な額として様々な機関が見積もっている額は490〜1700億
ドルである(条約事務局資料)。
[2]
世界銀行、国連開発計画、国連環境計画によって共同運営されている。地球温暖
化を含む6つの分野について、途上国に原則として無償で資金給与を行う仕組み。
COP4
で気候変動枠組み条約の資金メカニズムとして正式に合意された。
[3] 気候変動枠組み条約の下には、特別気候変動基金(SCCF)、および後発開発途上
国基金(LDCF)が設置されている。これらは、先進国からの自主的な資金給与に財
源を頼っており、地球環境ファシリティー(GEF)が運用している。
2.ナイロビ作業計画(気候変動の影響、脆弱性及び適応の5ヵ年作業計画)
(1)これまでの経緯
COP10で「適応策と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画」が採択され、その
中に「気候変動の影響、脆弱性及び適用に関する5ヵ年作業計画(COP12
でナイロ
ビ作業計画と改名)」が位置づけられました。
【目的】すべての国、特に後発開発途上国、島嶼国を含む途上国が、影響、脆弱性
と適応への理解を深め、適応の実践的活動と政策を可能にすること
COP12
では9つの初期活動(方法論とツール/データと観測/適応計画と実践例/(2)バリに向けての課題
作業計画の進捗状況の確認と、専門家グループ設置について検討すること。日、米、
豪などは資金面や効率性などの理由から設置には賛成していません。しかし、影響を
より強く受ける途上国にとって適応は切実です。現時点で中国、メキシコ、ジャマイカ
などが更なる適応策を推し進めていくために、専門家グループの設置を求める意見
提出を行っています。
3.2013年以降の枠組みとの関連
京都議定書では、温室効果ガスの削減(緩和)策を中心に取り扱われており、適応策
についてはあまり議論が進まなかったことから、2013年以降の枠組みでは、適応策の
議論を進めることが期待されています。議題にはありませんが、2013年以降の枠組み
に関するバリ・マンデートには、適応についてもなんらかの言及がなされることが期待さ
れます。今後の課題は、適応策に関する知見の蓄積と共有化、適応技術の移転、ま
た、適応にかかる膨大な費用を国際社会の中でどう分担するかといったことです。