「第1回特別作業部会(AWG1)」


◆  先進諸国の更なる削減に関する議論始まる

 2005年5月17〜25日までドイツのボンで第1回特別作業部会(AWG1)
が開かれました。議長はマルタのマイケル・ザミット・クタヤール氏、副議
長にブラジルのルイズ・アルベルト・フィゲリド・マカド氏が選出されました。
1週間の会議を経て最終日の深夜に「将来の作業計画」と題された文書
に合意しましたが、会議はほとんどが非公開で行われ、交渉プロセスは
非常に不透明なかたちで進められました。

◆  作業部会での議論と各交渉グループの意見

作業部会で議論の対象となった論点は以下のようなものです。

上記の論点の中で、途上国グループは、次の3点の主張を繰り返していま
した。

 また交渉の後半では、削減レベル、第2約束期間の長さ、交渉期限の3つ
をこのAWGで議論するように求めていました。途上国グループのなかのアフ
リカングループは、これに加えて、先進国が技術移転、能力開発などの約束
を強化するように訴えました。

 日本、ノルウェー、カナダ、ニュージーランドなどは、現在削減目標を掲げて
いる国々だけの削減では、条約2条の究極の目標を達成できず、どれくらい
の削減が必要かを科学的知見に基づいて削減量と削減する国々をまず考え
るべきだというスタンスでした。  

 EUは、唯一、2020年までに先進国は15〜30%削減すべきであるとの具体
的な削減目標値を提案していました。また、炭素市場が削減をする上での大
きなインセンティブになることを強調していました。

 削減目標に関しては、アイスランドやカナダがセクター別のアプローチ(総量
削減目標ではなく、産業、運輸などのセクター別の削減目標の設定)を考え
ることについて触れていました。これに対し、インドは、この作業部会は先進国
の削減目標値を変える議論であり、セクター別のアプローチなどは国内問題で
あるとしていました。

 また、ロシアとカナダは任意の(ボランタリーな)削減目標についても考慮され
るべきだと主張し、この主張に対しては環境NGOの中でも懸念する声があがっ
ていました。ロシアは、前回のモントリオールでの会議でも、任意の削減目標
をかかげたい国があれば考慮すべきだと言う主張をしており、今回の会議では
任意目標の採択などを含めたドラフト案を出してきていました。これについては、
COP/MOP2で議論されることになっています。
  カナダに関しては、会議中にカナダの新聞に、カナダが議定書の第2約束期
間での更なる削減には合意しないという政府内の情報が報道されたこともあり、
目標達成が難しくなっているカナダが、今後弱腰になり、交渉の足を引っ張る
可能性も心配されています。

 今回の交渉で日本は、条約2条を達成するために、科学的知見に基づいてま
ず長期目標を決め、必要な削減量を見極めていこうと発言していました。公開さ
れた会議では、先進国・途上国の協力が必要だと強く訴え、他の先進国からも
賛同する意見がだされていました。交渉期間中、EUが途上国との二国間会議
を進めて意見交換を図っていたのに対し、日本が話していた相手はEUや先進
諸国のみだったようです。日本はアジアの先進国として中国への働きかけを期
待されていますが、中国や途上国と話合う姿勢は今回も見られませんでした。
今後、日本がダイアログで発言した 南北間の“solidarity(連帯意識)”をどのよう
に築いていくのかが、今後の交渉を進める上でも非常に重要です。

◆  気候行動ネットワーク(CAN)の動き

 CASAも参加する世界の360以上の環境NGOで構成されている気候行動ネット
ワーク(CAN)は、公開された4回の作業部会のうち、2回発言する機会がありま
した。最初の発言では、2007年5月までは削減目標を定めるための分析・評価
を行う段階であり、その後交渉段階に入って、2008年のCOP/MOP4にこの議
論を終えるように主張しました。また、分析・評価すべき項目については、以下
の項目について分析・評価されるべきであると主張しました
(CANが発行しているニュースレター「ECO」参照)。

・条約2条の「究極の目的」について
・全体の削減量
・対策の性質
・それぞれの国への排出量の衡平な割当て
・市場メカニズム
・技術移転
・法的構造
・科学的・方法論的事項
・土地利用、土地利用変化と森林活動(LULUCF)
・適応策
・国際海運、国際航空(バンカーオイル)からの排出
・これまでの対策から得た教訓

 2回目の発言では、これらの分析評価をいつ、どこで、どのように行うのかとい
う将来の作業計画について合意するように促しています。

◆  「将来の作業計画」採択

 最終日の深夜に「将来の作業計画」について合意されました。
この中では、以下のことが確認されています。

 今後の作業スケジュールについては、2006年11月の京都議定書第2回
締約国会合(COP・MOP2)、2007年の第26回補助機関会合とCOP/MOP3
と一緒に作業部会が開かれることが決まっています。また、次回の作業部
会では、ワークショップが開催されることが決まりました。ワークショップでは、
@先進諸国の温室効果ガスの安定化シナリオとシナリオの含意を含む、更
なる約束を決めるための科学的基礎に関しての作業についての情報と、
A先進諸国の排出傾向、これまでの経験を含む様々な国々での政策と技
術による削減可能性、削減による費用と効果に関する情報についてのプレ
ゼンテーションがなされる予定です。このワークショップでは、IPCCからの
報告及び上記の内容に関して締約国が報告することになり、2006年9月1日
までに締約国は報告内容について提出することが決まりました。
  文書の最後には、クタヤール議長が作った「作業部会に関連すると考えられ
るトピック」という附属書が付けられています。これは各国の意見に基づいて議
長が作成したリストであり、以下の5つのテーマといくつかのサブテーマが上げ
られています。

1.先進諸国の更なる約束を決定するための科学的基礎
2.先進諸国の削減可能性と排出傾向
3.議定書の実施から得られた経験
4.先進諸国の更なる約束を実施するための構造
5.法的事項

 途上国は、AWG1の議論が、先進諸国の削減以外の議論に広がることは
避けたいというスタンスであったため、この附属書をつけることに批判的でし
たが、最終的にはこれは議長が個人的にまとめたリストだということで、附属
書をつけることに合意しました。

 以上、先進諸国対途上国という構造が崩れぬまま議論は平行線をたどって
いましたが、最後には次の6ヶ月に向けたステップを踏み出す合意ができまし
た。しかし、日本を含む先進諸国の反対により、作業部会での交渉期限を決め
ることは今回もできませんでした。

 2006年11月のナイロビでの会議では、議定書9条に基づいて、適応策やCDM
などを含めた議定書全体の見直し作業が行われます。各国はこれと並行して、
特別作業部会において議論を進めるための分析と評価事項を定め、この議論
を2008年に終えるためにも、明確な将来の作業計画について合意する必要が
あります。

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